有限会社いせや写真館

まずタイトルが”写真館からネットの貸衣装事業に”となっていますね！？

そうですね。当社はもともと写真館を2店舗経営していました。そしてあるとき、お店にテナントとして入居していた貸衣装屋さんが40着の着物を残したまま撤退してしまったんです。で、スタッフから「この着物、なんとか活用できませんか？」と言われていたので、2010年からネットの貸衣装事業を始めることにしました。

もちろんそれまでネット販売などしたことはないので、全員で試行錯誤しながらのスタートでした。当時は、他の着物の貸衣装屋のほとんどが着物屋を本業としており、当社のように写真館がネットで貸衣装をしているところはなかったんです。

そこで、撮影技術の高さを活かした商品撮影を強みにしていったら、これが結構いいペースで売上を伸ばしていったんです。

もともと持っていた技術を新事業にバッチリ活かせたということですね！10年前に始めたなら、いまではもう相当な売上に……？

正直、いまはネットの貸衣装の売上が全体の8割くらいになっています。もはや写真館を経営する会社ではないのでは……ともたまに言われますけど、淡路島の中ではいまだに町の写真屋さんと思われていることも多いんですよね。

でもネット事業ひとつに絞るということはしません。写真館は先代から引き継いだ事業でもありますし、七五三や結婚式の写真を撮影することで貸衣装に活かせるヒントを得ることも多いです。

なるほど。いくらネット事業が伸びているとはいえ、写真館の仕事はそれを支える重要な技術だから残していくっていうことですね。

ただ、ここまでネット事業が成長できたのは撮影技術の高さだけではないんですよね。

それこそ最初は商品写真のキレイさで差をつけようとしていましたが、現在の最大の強みは「固定観念にとらわれず、顧客のニーズを重視した着物の提案」だと言えます。お客様は七五三や成人式といったイベントでご利用が多いですが、ほとんどが着付けに慣れていない方で、当たり前ですがネットだと実際に商品を手に取って見ることも、横に立って指導することもできません。

ですからお客様が少しでも簡単に着付けができるように、マジックテープを使ったり、着る順番を間違えないように大きく名前をつけたり、着崩れしないようにサスペンダーを使った着付け方法を開発したり、いろいろと工夫をしました。

実はこれらは伝統文化という面から着物業界では非常識、タブーとされるものばかりです。新作着物の仕入れで展示会などに行くと、同じ貸衣装をしている着物屋さんからチクチク言われたりすることもよくありました。

でもお客様にとって七五三や成人式は一生に一度のイベントなので、絶対に失敗ができないですよね。当社はネット事業を始める前から単なる「写真屋」ではなく、「思い出づくりのメーカー」というスタンスをとっていました。もともと着物業界の常識を持ち合わせていない自分たちにとって、大切な思い出づくりの日をより確実に、より安心して迎えていただくための工夫はごくごく自然なことなんです。

それに当社が始めた非常識が、やはりお客様にとって安心・便利ということで他の店舗にも広がって、着物の貸衣装の常識になったものがたくさんありますしね。

「業界の常識」がないからこそ、お客様のことだけを考えることができたんですね！一度当たり前になった常識を捨てるのはなかなか難しいし、異業種から参入したからこその強みですね。

着付けが簡単だったと喜んでいただけるお客様もたくさんいらっしゃいますし、あとこれは自慢になっちゃいますが……実際に楽天の貸衣装カテゴリーでは今のところ当社はトップで、表彰もたくさんいただきました。

それでも日々の運営の中で、着物についてお客様が分からないことや不安に感じていること、間違えやすいところがまだまだ残されているなぁと感じることがあります。

そういった点をひとつずつ改善しながら、同時に新しい着物のスタイルも提案しています。他にはない小物なんかも用意していますが、それひとつで見映えがすごく良くなったりするので、お客様にも好評です。

写真屋さんとの会話というのを忘れてしまいそうですが、新しいアイデアや改善についての工夫は、スタッフ全員で知恵を出し合ったりしているんですか？

そうできれば理想ですが、人には得意不得意がありますよね。当社ではEG（エマジェネティックス）研修というツールを導入していて、社員の特性を診断した上で役割分担を行っています。

例えば、アイデア出しが得意だけどそれをカタチにするのが苦手な人もいます。逆に、アイデア出しは苦手だけど人のアイデアをカタチにするのが得意な人もいます。その他にも分析が得意、接客が得意などいろいろなタイプの人がいるので、それに合わせて作業を担当し、その分野で自分を成長させていくというチーム作りをしています。

ここで大事なのは、お互いの得意分野を「なんとなく」で認識するのではなく、実績のある科学的なプロファイリングを基にすることです。EG研修は世界中で実績のあるツールですが、当社では研修を受けた社員の診断結果を壁に貼って、誰でも他の人の特性を正確に把握できるようにしているので、自然とお互いを補い合えるようになっています。

さきほど当社の強みは固定観念にとらわれずに顧客のニーズを満たすことと言いましたが、それを実行するにはアイデア出しだけではなくいろいろな作業が必要です。

ネット事業というのは商品企画から始まって、仕入れ・撮影・ページ作成・販促企画・注文処理・出荷、そしてお客様対応と業務は多岐にわたります。商品だけでなく業務にも改善を加え、それぞれの得意分野で全員が協力することで顧客のニーズを満たし、ネットの貸衣装を通じた「思い出づくりのメーカー」の役割を果たしています。

まあそのEG研修はそこそこ費用がかかるんですが、コミュニケーションや協力体制を円滑にするための投資は惜しみません。その成果なのか、相談にしろ問題解決にしろ、社内のコミュニケーション量はとても多いですよ。

淡路島にもそんなチーム作りをしている会社があるんですね！自分が不得意なことに必要以上に悩むことなく、ストレスのない仕事ができそうです！他にも何か取り組みはしていますか？

できるだけ風通しのいい組織になるようにしています。年齢や立場に関わらず、出た意見はきちんと汲んで全員で検討するようにしていて、取り入れた意見は経営戦略から業務マニュアルまで、あらゆるところに反映しています。その結果もきちんと見えるようにして、ちゃんとやりがいを感じてもらえるようにしています。

それと、新卒は1人でなく2～3人同時に採用するようにしています。やはり同期というのは特別な存在で、負けられないと頑張る気持ちをもらえるライバルでもあり、悩んでいる時には心強い言葉をかけてくれるパートナーでもあります。常にお互いを支え合える同期という存在を、これからも作ってあげられるように採用していきます。

確かに、同期って遠慮なく話せる相手でもありますよね！EG研修でお互いのこともしっかり理解できているし、楽しく働くうえでかけがえのない存在ですね！では最後に一言お願いします！

ネットの貸衣装は、新しい提案がまだまだいくらでもできる業界です。「思い出づくりのメーカー」としてもっとたくさんのお客様に、いろいろなシーンやスタイルで楽しんでいただけるよう、さまざまな個性を持った人材が必要です。そして、それぞれの個性を最大限に活かせる環境をこれからもどんどん作っていきます！